ペット防災 第7回「SNSではわからない事、それぞれの事情、変わる状況」

ペットと暮らす2019/07/01

 

 

被災地、そして被災者には本当にそれぞれの事情があって、状況も日々変わって行きます。

 

熊本地震の時、被災していた避難所の補修が終わり、それまで廊下で寝起きしていてプライバシーが無かった状況から、それぞれの家族がカーテンで仕切られたスペースで区切られた空間への引っ越しがありました。

 

僕は簡単に「これで少しは落ち着いた気持ちになれるかな?」
そう思っていました。

 

ところが「高齢で一人の人はきついと思うよ、閉鎖された空間で独りは辛いよ、うちは家族だからいいけど」そう被災者の方がおっしゃいました。

 

確かに被災者の方の一部はカーテンで仕切られた新しいスペースへ移動せず、それまでと同じプライバシーがない大部屋に残る選択をしました。

 

避難所にはユキちゃんと云う名前の白い猫がいました。

 

独り暮らしのお母さんが地震の一年ほど前に保護した野良猫で、地震でお母さんの家は全壊して避難所で暮らしていました。
最初はユキちゃんを雑然とした避難所の中へ連れて行く事が出来なくてしばらくの間はユキちゃんと二人で車中泊をしていました。
それから避難所の中にユキちゃんと一緒に入りました。

 

避難所の補修後、被災者のスペース移動に伴い、ペットたちは衛生上の理由で避難所からでて行かざるを得なくなりました。
それに対応する為に僕たち支援者は環境省の支援を受けて、避難所の敷地内にペットの一時預り施設を作りました。

 

施設がオープンする直前にお母さんからユキちゃんを知り合いに譲渡すると云う話を聞きました。
僕は「なんで?施設が出来たらそこに預ける事が出来るし、今までと変わらず毎日会えるのに」そうお母さんに言いました。

 

ユキちゃんのお母さんは「わかってる、でもね、私にはもう帰る家がないの、これから仮設にも行かなければならないし、その先も見えない」

 

「先行きが見えないの、そんな状況で一緒にいるよりも私の知り合いの所に行った方がユキちゃんの幸せの為にはいいと思うから」
そう言いました。

 

別れの日。
ユキちゃんのお母さんは一日中泣いていました。

 

 

SNSではわからない、被災地にいてもわからない事があります。

 

当時ユキちゃんのお母さんの判断に対して遠い土地でSNSを見て「私なら絶対に手放さない」「信じられない」そう言った人たちもいました。

 

でも被災者にはそれぞれの事情があり、日々状況は変わって行くのです。

 

SNSでわかる事はそんな被災地の状況の表面だけです。

 

災害時、SNSにはとても助けられました。
支援物資がたくさん届き、SNSを見て全国からたくさんのボランティアの皆さんが駆けつけてくれました。

 

でも、反面、SNSによって被災地が混乱した現実もありました。

 

災害時のSNSによる影響をしっかりと考える必要があります。

 

発信される情報が信頼出来る情報なのか、違うのかを慎重に見極める姿勢が必要です。

 

仮設で暮らしているユキちゃんのお母さんに会いに行った時、お母さんは「こないだユキちゃんに会いに行ったのよ、そしたらユキちゃん私に知らん顔するんだから」そう僕に言って笑っていました。

 

お母さんは少し嬉しそうに、少し寂しそうに笑っていました。

 

一般社団法人HUG代表理事

冨士岡 剛

 

 

ペット防災 第8回「ペット防災の3つの柱」

 

 


コラム提供:一般社団法人HUG


#ペット防災 #同行避難 #離れても家族

 

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